蘋果派 Apple Pie


蘋果派 2002年4月


2002年4月30日

■Mac OS X 10.1 で漢語拼音 (ピンイン)

現代の標準中国語の発音は、通常、漢語拼音 (ピンイン) というローマ字システムで表すことが国際標準になっていて、台湾を除き広く普及している。漢語拼音 (ピンイン) では、a, o, e, i, u, ü といった母音などに声調 (トーン) を区別するために字上符として声調符号をつけた文字が使われている。

●フォント

Mac OS X 10.1 には、これまでの Classic Mac OS や Mac OS X 10.0.x と違い、漢語拼音 (ピンイン) の声調符号附きローマ字を“全角等幅”ではなくプロポーショナル形式で表示できるフォントが標準で用意されている。「ヒラギノ Pro」フォントだ。10.1 のヒラギノ Pro は Apple Publishing Glyph Set (APGS) という“文字セット”(正確には字形セット) で構成されていて、 APGS の元になった文字セットの一つ JIS X 0213:2000 (2000JIS) に、これらのローマ字が収録されているからだ。ヒラギノの欧文文字のデザインについては好みが分れるかもしれないが、単語なり一節なりの中で欧文書体と混在させなければ、じゅうぶん実用になるだろう。

もし、ヒラギノ独特の欧文文字デザインを避けたいのであれば、 Microsoft 欧文 TrueType フォントを、プリインストールされている Mac 版から、同社サイトで配布されている Windows 版に入れ換えることで、選択肢を増やすことができる。 現在、Microsoft 社は Web サイト上でのフォントの配布を取止めている。

なお、ヒラギノやWindows 用 Unicode フォントを使っても、Unicode 非対応の Carbon アプリケーションでは、以下に述べる Classic Mac OS と同じ制約がある。

漢語拼音 (ピンイン) で必要になる文字のなかには、Mac OS で西欧語処理に使われてきた MacRoman 文字セットでは扱えない文字が含まれている。これらは、中国大陸の GB 2312 規格に収録されているため、Mac OS では、それに準拠した MacChineseSimp 文字セットの簡体中文フォントを使うことで扱うことができる。しかし Classic Mac OS の簡体中文フォントでは、該当文字はいわゆる“全角等幅”で表現されているため、実際にはまったく実用にならない。このため Classic Mac OS では、主に特別なサードパーティフォントと専用のキーボード配列書類が使われてきた。

Mac OS X 用の欧文フォントのうち、Times, Helvetica, Courier, Lucida Grande といったものは、Mac OS X の Unicode サポートに合せて拡張されていて、第一声を表す母音字 ā, ō, ē, ī, ū をカバーするようになった。おそらくこれは日本語ローマ字の長音か、あるいは他の言語の表記のためのものであって、漢語拼音 (ピンイン) のためのものではない。第三声を表す母音字 ǎ, ǒ, ě, ǐ, ǔ 、それに「ü」にさらに声調符号をつけた形の文字 ǖ, ǘ, ǚ, ǜ をカバーしていないからだ。このため、これらのフォントだけを使って漢語拼音 (ピンイン) を綴っていくことはできない。

なお、Mac OS X 10.2 に含まれる Lucida Grande は、漢語拼音 (ピンイン) で通常使われる文字をカバーするようになった。

●入力方法

声調符号附きローマ字を入力するために、もっとも準備が簡単なのは、Mac OS X 標準の《簡体中文》輸入法 (インプットメソッド) を使う方法だ。「字符表 (文字パレット) 」からは声調符号附きローマ字を選択することができないが、「ABC標準」モードで「v8」とタイプすると、候補ウィンドウに現れ選択することができる。《TextEdit》や《WorldText》といった“Unicode 対応アプリケーション”上でなら、確定後、該当部分を選択しヒラギノフォントを指定し適用することができる。こうすることでプロポーショナルになり読みやすくなる。(なお、日本語インプットメソッドの「文字パレット」からも選ぶことができるが、紛わしい文字が排除されている《簡体中文》輸入法 (インプットメソッド) を使った方が文字選びが楽だ。)

漢語拼音 (ピンイン) がある程度以上の長さを超えるようなら、上述の方法は実用的とはいえない。Mac OS X 用の《ATOK》あるいは《EGBRIDGE》があれば、吉田良夫さんによる「ATOK14 簡体字中国語辞書」などの日本語インプットメソッドの辞書を利用して、「lv3」といった形式の打鍵で、「lǚ」と入力することができる。

なお、Mac OS X・Mac OS 9 には Unicode キーボード配列として《Extended Roman (U)》と《Unicode Hex Input》が用意されている。前者は漢語拼音 (ピンイン) の声調符号附きローマ字の一部について入力する術がなく、後者は Unicode の文字コードを4桁の十六進数で入力するものなのでコードをいちいち調べる (あるいは暗記する) 必要があり、こういった用途には向かない。

●余談

Mac OS 繁體中文版のマニュアル/ヘルプにある拼音 (ピンイン) 入力の部分は、冒頭で漢語拼音 (ピンイン) が標準として認知されていく過程を説明している。その中に「1958年に ISO が漢語拼音 (ピンイン) を中国語ローマ字綴りの国際標準に決めた。」とあるが、これは「1982年」の誤りのはずだ。この文章の冒頭にもあるのだが、1958年は漢語拼音 (ピンイン) が中国大陸で全国人民代表大会を通過し、国内標準になった年だ。手許にある冊子体のマニュアル《Macintosh 中文系統 7.1.2T 使用手冊 有關中文輸入、詞典工具及 Macintosh 字體的資料》に見えるこの一連の記述は、Mac OS 9.x や Mac OS X 10.1 のオンラインヘルプ《繁體中文輸入法輔助説明》にも踏襲されている。




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